人生オワタカの冒険~ロシア編~三日目①出国カード再発行でぐしょ濡れ

けたたましい音を出しながら震えるスマホの目覚ましで目を覚ました

「だ、だり~」

自然とそんなことを声に出しながらやたらと広いベッドの上で転がる

一日目、二日目の疲れが色濃く残っているのを感じつつ、渋々起き上がり、黙々としたくをする

前日のホテルのチェックインの時に、出国カードがないことが発覚したため、この日は空港まで行って出国カードの再発行をしなければならない

ここのホテルは出国カードがなしで泊まれたが、今後どこかで、例えば国内線を使うときなどで必要になることもあるかもしれない

ということで、めんどくさいけど、一旦空港へ行くことにした

まだ8時前なので、チェックアウトまで4時間あるため、荷物はホテルに置いていくことにした

前日ここまで来たルートと同じルートを遡っていく

ほとんど新鮮さがないので、油断すると溜息がすぐこぼれてしまう

値段は忘れたが、やれやれ2000円くらい損したなあ

というようなことを思ったような気がする

とにもかくにも何事もなく空港に到着した

とりあえず、出国カードをなくした場所最有力のsimカード屋に行ってみた

「すいません」と絶望しながら声をかける

前日のsimを売っていた男を違う男が店番をしている

たどたどしい英語で、「昨日ここでsimを買ったんだけど、その時出国カードを渡したんだよね。そんで返してもらってないようなきがするんだけど、俺ここに忘れていった?」と聞いた

「わからない、そういうものはない」との返事だった

まあ予想通りだ

俺だってたぶん同じ状況なら変な男が忘れていった紙切れなんて捨てるしな

「そっかー、ありがとな」

そういってsim売り場を立ち去った

ネットでどこで再発行してくれるか調べると、税関ゲートの中に発行所があるようなことが書いてある

日本とかタイだと税関通過したら逆走できないじゃん?

これ、マジ情報なのか?と疑わしく思えてくる

暇そうなお姉ちゃんの空港職員が歩いていたので、「すいません、出国カードをなくしたのですが、再発行はあそこにある税関ゲートの中でできますか?」と聞いたみた

「ちがいます、そこではできません」そう答えるとお姉ちゃんは歩き去っていった

「ち、違うんだ・・・」

予想と違う答えにフリーズしてその場にぽかんとした顔で立ち尽くす俺

こ、困ったな。ほんとに違うのか?気を取り直して、インフォメーションセンター的なところのお姉ちゃんに聞いみた

すると、なにやらよくわからないけど、税関ゲートの中でできるとかそんなことを言われた

「で、できるんだ・・・」

どっちなんだよ!と心の中で突っ込みを入れつつ、インフォメーションセンターのお姉ちゃんを信じることにした

税関ゲートの前までやってきた

「ごくり。逆走できるような雰囲気じゃねえぜ」

と言ってゲートの前で立ち尽くした

でも見ている人もいないので、怒られたら怒られたでまあいいか

そう思いながら思い切って税関ゲートの中へと逆走して入っていった

「誰もいない、ほんとにいいのか?」と思いながら、きょろきょろとあたりを見回す

パッと見再発行手続きをやってくれそうなところはない

さすがに荷物が回転寿司みたいにでてくる台のほうにはないだろう

そう思いながら、観察すると逆走して左手に扉があるのを見つけた

「あそこか?」とつぶやきながら、その扉へ向かった

一応ノックして恐る恐る扉を開けてみた

中は思ったより狭く、6畳くらいの部屋で、部屋の中にはお姉ちゃんが一人パソコンに向かって作業をしていた

「す、すいませーん」と声をかけるとお姉ちゃんはギョッとしたような顔で振り返った

あまり普段人が入ってくることがないんだろうか

すごい警戒されているような気がするぜ

すいません、出国カードをなくしたんですけど、ここで再発行できますか?

と聞くと、できるとのこと

じゃあお願いしますというと

「乗ってきた飛行機のコードは?」と言われた

飛行機のコード・・・

う、うーん何番だろう、全然わかんねえな

ちょ、ちょっとまって、今書類出すから

そう言って、背負っているリュックをひっくり返して書類を探す

運よく、入国の時に使った書類一式が入っていて助かった

とはいえ、どこにコードが書いてあるんだろう

20枚くらいの紙のをめくってコードを探す

全然見つからねえ

職員のお姉ちゃんはあきらかにイライラしている

「なんで乗ってきた飛行機のコードわからないの?え?来たの昨日だよね?」みたいなことを言われる

普通わかんねえだろ!と思いながらも、再発行してもらう側なので、へへへ、サーセンと卑屈に笑う

「へへ、すいません。これですかね?」「は?なにこれ、全然違うわ」みたいなやり取りを何回かした後

五分ほど探してそれっぽいのが見つかった

脇汗がすごい

ぐしょ濡れである

俺から無言で紙を受け取るとお姉ちゃんはパソコンで何やら手続きを始めた

10分くらいたっただろうか

静まり返った狭い部屋で、わりと近い距離で無言の十分

重苦しいったらなかったね

お姉ちゃんは結構美人だったこともあり、余計空気が重かったよね

お姉ちゃんは突然振り返ると、紙切れを渡してきた

再発行の手続きが終わったようだ

「スパシーバ」とロシア語でお礼を言って事務所を後にした

まったくをもって無駄かつ嫌な時間だったぜ

みんな、出国カードはなくさないようにしような

絶対そのほうがいいぜ

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