某祝日前の木曜日
俺は大阪の動物園前駅に降り立った
立っているだけで汗が出てくるくらいの季節である
あちいぜ
天気は晴れ
左手の方を見ると、あべのハルカスが見える
あべのハルカスを名前でしか見たことがないので、少し遠くにそびえたつあの建物が本当にあべのハルカスなのかはよく知りはしない
全然別の何かの建物化もしれない
後ろを振り返ると、高架みたいなのがあり、その先へ行くと新世界が広がっているらしい
よくは知らないが、通天閣とかなんかだろうか
本当によくはわからない
前方には広めの道路と横断歩道
横断歩道の信号を渡った先には「動物園前一番街」と書かれた看板のある商店街が奥へと続いている
商店街を先へとのそのそ歩いていくと、閑散としているわけではないが、お世辞にも活気があるとは言い難い商店街が並んでいる
お姉ちゃんが接客しているちょっと寂れた感じの飲み屋がちらほらある
中にはちょっとかわいい中華系のお姉ちゃんもいたりして、ドアから顔を覗かせて控えめに呼び込みをかけたりしている
それにしても昼間っから酒を飲んでいるやつがやたらと多い
どうしようもないやつらである
途中で南進右折し、さらに商店街を少し進むと南北に走る道路にぶつかった
右折じゃなくて左折してしばらく歩くと高級料亭街だ
左折した先の道路を渡り、スーパー玉手の脇の道を西へ進むと少し空気が変わったのを感じる
俺は西成と言われる街に到着していた
西成に来たのは初めてだ
勝手もわからないので、とりあえずあたりを散策してみることにした
第一印象としては、老人が多いと感じる
とりわけジジイが目立つ
ババアもいなくはないが、ジジイほど多くはない
街並みも介護施設というか、老人が住む福祉ホテルみたいなものがたくさんある
ガラスドア越しに見える建物の中には、街中で見かけるジジイよりも元気のないジジイが見え隠れしている
公園や道端に大勢の薄汚い身なりのジジイがおり、数人でたむろして、なにやらのんびり話に花をさかせている
競馬かパチンコの話をしているに違いない
片手に酒を装備しているジジイも多い
なんだかしみったれた感じの街だな
というのが正直な感想だった
意外なことに、そんなに道路にごみは落ちていない
思ったよりきれいだ
なにはともあれ拠点確保は最優先なので、暑くて溶けそうなこともあり、まずは寝床を探すことにした